住宅ローンの変動金利が上がったら、返済額は月いくら増えるのか ― 「5年ルール・125%ルール」の落とし穴まで

日本の集合住宅・住宅団地の外観 ― 住宅ローンと変動金利のイメージ

日銀が2026年6月に政策金利を1.0%へ引き上げ(関連記事)、「金利のある世界」がいよいよ家計に近づいてきた。そこで多くの人が知りたいのは、結局のところ「自分の変動金利が上がったら、毎月いくら増えるのか」という一点だろう。本記事では借入額別に返済額を具体的に試算し、さらに「すぐには上がらない」と言われる5年ルール・125%ルールの”落とし穴”まで構造で読み解く。

結論 ― 先に知っておきたい3点

  • 金利が0.25%上がると、返済額は借入額の概ね「100万円あたり月100円強」増える。4,000万円・35年なら月+約4,500円(年+約5.4万円)が目安。
  • 多くの人は「5年ルール」で当面は返済額が変わらない。ただしこれは”猶予”であって”免除”ではなく、内訳では利息の割合が静かに増えている。
  • 金利が急上昇すると「未払い利息」が発生しうる。返済しても元金が減らない――125%ルールの裏に潜む、最も注意すべきリスク。

① まず数字 ― 借入額別「返済額はいくら増えるか」

下の表は、返済期間35年・元利均等返済で、適用金利が0.5%(現在の変動金利の目安)から0.75%、1.0%へと上がった場合の毎月の返済額を試算したものだ。今の変動金利の出発点はおおむね0.5%前後なので、「+0.25%」「+0.5%」の列が将来の上昇イメージにあたる。

借入額金利0.5%0.75%(+0.25)1.0%(+0.5)
3,000万円約77,900円約81,200円約84,700円
4,000万円約103,800円約108,300円約112,900円
5,000万円約129,800円約135,400円約141,100円
返済期間35年・元利均等・ボーナス払いなしで試算(編集部)。実際の金利・返済額は金融機関や契約条件により異なる。

ポイントは、負担増は「借入残高に比例する」ということだ。0.25%の上昇は、借入4,000万円なら月+約4,500円、5,000万円なら月+約5,600円。1回の利上げ(0.25%)だけなら「外食を1〜2回減らす」程度に見えるかもしれない。だが利上げが2回、3回と続けば負担は積み上がる。0.5%上がれば4,000万円で年+約11万円、1%上がれば年+約22万円――ここまで来ると家計の体感は明確に変わる。

② なぜ「すぐには上がらない」のか ― 5年ルールと125%ルール

変動金利には、金利そのものの見直し(半年ごと)と、毎月の返済額の見直し(5年ごと)という2つの別々のタイミングがある。ここを多くの銀行が次の2つのルールで運用している。

  • 5年ルール:金利が上がっても、毎月の返済額は5年間据え置く。家計が急に苦しくならないための”時間的な猶予”。
  • 125%ルール:5年ごとの返済額見直しで、新しい返済額は前の1.25倍までが上限。金利が急騰しても返済額の跳ね上がりを抑える。

一見すると借り手にやさしい仕組みだ。だが、ここに最大の誤解がある。返済額が据え置かれても、金利が上がった分の利息はちゃんと請求されている。何が起きるかというと――毎月の返済額のうち「利息」に回る割合が増え、その分「元金」の返済が減るのだ。つまり、返済額が同じでも、借金(元金)が思ったほど減らなくなる。猶予されているのは”痛み”であって、”負担そのもの”ではない。

③ 最大のリスク ― 「未払い利息」とは何か

金利の上昇が大きいと、ある臨界点を超える。毎月の返済額よりも、発生する利息のほうが多くなる瞬間だ。こうなると、返済額を全額利息に充てても払いきれず、足りない分が「未払い利息」として翌月以降に繰り越されていく。

この状態が意味するのは深刻だ。返済を続けているのに元金がまったく減らない――どころか、払いきれなかった利息が積み上がっていく。そして125%ルールで返済額の上昇が抑えられているほど、未払い利息は発生しやすくなる。最終回まで未払い利息が残れば、ローンの最後にまとめて一括で支払いを求められる可能性もある。「返済額が増えないから安心」という理解は、ここで裏返る。5年ルール・125%ルールは、上昇局面では「リスクを先送りして見えなくする」装置でもあるのだ。

編集部の見解 ― 「金利のある世界」で点検すべきこと

日本は四半世紀ぶりに「金利が上がっていく」局面に入った。長く続いた超低金利のもとでは、変動金利を選ぶのは半ば合理的な選択だった。問題は、その「上がらない前提」が崩れたあとも、頭の中の前提が更新されていないことにある。

大切なのは、慌てて固定金利に借り換えることでも、利上げのたびに一喜一憂することでもない。「金利が1%上がったら、自分の返済額と家計はどうなるか」を、紙の上で一度シミュレーションしておくことだ。上の試算でいえば、年+10〜20万円の負担増を吸収できる家計なら、過度に恐れる必要はない。逆に吸収できないなら、繰り上げ返済や固定への一部切り替えなど、打てる手は利上げが本格化する前のいまのうちにある。5年ルールが与えてくれる”猶予”の正しい使い方は、安心することではなく、備えることだ。


よくある質問

Q. 日銀が利上げしたら、私の返済額はすぐ上がりますか?

多くの銀行では、政策金利→短期プライムレート→変動金利という順で時間差を置いて反映されます。金利の見直しは年2回(4月・10月)、返済額の見直しは5年ごとが一般的なので、「翌月いきなり跳ね上がる」ことはほぼありません。ただし返済額が据え置かれている間も、内訳では利息の割合が増えています。

Q. 0.25%上がると、結局いくら増えるのですか?

借入残高に比例し、目安は「100万円あたり月+100円強」。借入4,000万円・残り35年なら月+約4,500円(年+約5.4万円)です。残高が減っている人ほど、上昇額も小さくなります。

Q. 5年ルール・125%ルールがあれば安心ですか?

短期的な家計の急変は防げますが、金利上昇そのものを免除する仕組みではありません。むしろ金利が急騰した局面では「未払い利息」を生みやすく、元金が減らないリスクを覆い隠す側面があります。安心材料というより、備えるための時間と捉えるのが正確です。

Q. 固定金利に借り換えるべきですか?

一律の正解はありません。固定金利はすでに長期金利の上昇を織り込んで先行して上がっており、「変動が安く固定が高い」状態が続いています。判断軸は、金利が1%上がった場合の負担増を自分の家計が吸収できるか。吸収が難しいなら、固定への一部切り替えや繰り上げ返済を、利上げが本格化する前に検討する価値があります。


一次資料・参考

  • 日本銀行「金融政策決定会合の結果」(2026年6月)
  • 各行の住宅ローン約款(変動金利型・元利均等返済の返済額見直しルール)
  • 住宅金融支援機構/民間金融機関の変動金利・固定金利の動向資料

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算であり、特定の商品の推奨や投資・借入の勧誘を目的としたものではありません。実際の返済額・金利は金融機関や契約条件により異なります。数値・事実は記載時点のものです。

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