韓国のHUG保証保険とは ― チョンセ保証金を国が肩代わりする仕組みと、入れない物件が教えてくれること

ソウル市内、密集するアパート団地群と幹線道路の空撮
チョンセ保証金年0.097%(最低水準)年0.211%(最高水準)2年間の総額(目安)
2億ウォン年 約19,400円相当年 約42,200円相当約4.1万〜8.9万円相当
3億ウォン年 約29.1万ウォン年 約63.3万ウォン約58万〜127万ウォン
5億ウォン年 約48.5万ウォン年 約105.5万ウォン約97万〜211万ウォン
当研究所試算(保証金額×保証料率×365日で概算、円換算は1万ウォン≒1,050円)。実際の料率は住宅類型・保有期間で個別に決まる。

3億ウォンのチョンセなら、2年間で数十万〜百万ウォン強――保証金全額に対して1〜2%程度の「保険料」で、数億ウォン規模の保証金を公的機関に肩代わりしてもらえる計算になる。保証料は借り手負担が原則だが、ソウル市など自治体が若年層・新婚世帯向けに保証料の一部を補助する制度も別途ある。

本当に機能しているのか ― 事故統計で確認する

制度を信じていいかは、実際の事故データで検証できる。2023年5月の引き締め以降、保証比率90%を超える高リスク帯の事故金額は、3兆3,375億ウォン(2023年5月)から4,120億ウォン(2025年8月)へ、87.6%減少した。全体で見ても、HUGの保証事故は2024年の4兆4,896億ウォン(20,941件)から2025年は1兆2,446億ウォン(6,677件)へ急減。さらに2026年に入り、HUGが回収した債権額が新規の代位弁済額を上回る「ゴールデンクロス」が初めて発生したと報じられている。

2024年2025年増減
保証事故金額4兆4,896億ウォン1兆2,446億ウォン▲72.3%
保証事故件数20,941件6,677件▲68.1%
新規保証供給額67兆2,657億ウォン64兆9,784億ウォン▲3.4%
出典: HUG統計にもとづく韓国各紙報道(財経新聞・ソウル経済TVほか)より当研究所整理。供給額はほぼ横ばいながら事故は大幅減少=審査の質が上がったことを示す。

供給額(新規加入)がほぼ横ばいなのに事故が7割減った、という事実が重要だ。これは「入れる件数を絞った」だけでなく「入れる物件の質を上げた」ことを意味する。賃貸市場のウォルセ化が進む一方で、残るチョンセ市場では安全網が強化されているという、やや意外な二重の構造がいまの韓国にはある。

落とし穴 ― 「入っていれば安心」ではない

保証保険にも限界がある。第一に、審査落ちする物件は加入すらできない――保証比率オーバーの「危ない物件」ほど保険で守られない皮肉がある。第二に、請求までに時間がかかる。契約終了後1か月が経過し、かつ임차권등기명령(賃借権登記命令)が完了して初めて請求できるため、その間の資金繰りは自分で耐える必要がある。第三に、更新のたびに再加入が必要な商品が多く、契約途中で切れていることに気づかないケースもある。保証保険は「絶対の安全」ではなく、「万一の際に取り立てを国に肩代わりしてもらえる」という時間差のある保険だと理解しておくべきだ。

会計の視点で見ると、チョンセ保証金は借り手にとって「大家への貸付金」という資産だ。保証保険とは、その貸付金の信用リスクを、年1〜2%程度のコストで国に移転する取引にほかならない。興味深いのは、この保険が単なる救済策ではなく、審査を通じて「貸してはいけない相手」をあぶり出すフィルターとしても機能している点だ。制度が健全に回っているときほど、保険はむしろ「入れない」ことで危険を教えてくれる。安心はお金で買うものであると同時に、審査に落ちること自体が価値ある情報なのだ。

所長・トナリ

よくある質問

ウォルセでもHUGの保証保険に入れますか?

入れる。ウォルセでも保証金部分(ウォルセ保証金)を対象にした返還保証があり、仕組みはチョンセ版とほぼ同じ。ただしウォルセは保証金自体が小さいことが多く、保険の必要性はチョンセより相対的に低いケースが多い。

大家が保険加入に反対したら入れませんか?

加入自体は借り手が単独で手続きできる商品が主流で、大家の同意が必須ではない場合が多い。ただし物件情報の確認に大家の協力が要ることもあるため、契約時にあらかじめ確認しておくと手続きがスムーズになる。

保証比率オーバーで加入を断られたらどうすればいいですか?

その物件のチョンセ契約自体を見直す材料にすべきだ。登記簿で先順位の抵当権を確認し、保証金の減額交渉やウォルセへの変更を検討する、あるいは物件を変える判断も選択肢に入る。「保険に入れない」という結果を、危険信号として受け止めることが実務上もっとも重要。

日本人がチョンセで部屋を借りる場合も対象になりますか?

外国人(外国人登録済みの在留者など)も一定条件で加入対象になる場合がある。ただし細かな要件は年々変わるため、契約前にHUGの公式窓口または不動産仲介士に最新条件を必ず確認してほしい。

一次資料・参考

  • HUG(住宅都市保証公社)公式サイト: チョンセ保証金返還保証 商品概要・利用手続き
  • 京郷新聞「HUG保証基準緩和がチョンセ詐欺を招いた―再び締めたら事故急減」
  • 租税金融新聞「HUG、今年のチョンセ保証金事故が前年比半減」
  • ファイナンシャルニュース「HUG、今年の債権回収額が代位弁済を上回る『ゴールデンクロス』」

※本記事は制度の構造解説であり、特定の保険加入・契約を勧めるものではありません。保証比率・保証料率・統計数値は執筆時点の公表情報にもとづく概算を含み、今後変更される可能性があります。実際の契約・加入にあたっては、HUG公式窓口や専門家への確認を必ず行ってください。ウォン円換算は概算です。

関連記事 ―「世界を読む」

時期保証比率の上限公示価格に対する保証金上限
〜2023年5月100%公示価格の140%
2023年5月〜(現行)90%公示価格の126%
出典: HUG制度改定(2023年5月)にもとづく各社報道より当研究所整理。「126%ルール」と呼ばれることもある。

具体的に試算してみる。公示価格4億ウォンのマンションなら、住宅価格とみなされるのは4億×140%=5.6億ウォン、その90%で保証金上限は約5億400万ウォン。もしこの部屋のチョンセ保証金が5億ウォンなら加入できるが、5.5億ウォンなら上限超過で加入を断られる。つまり「保証保険に入れない」という審査結果そのものが、「この物件は保証金が重すぎる」という警告にもなる。契約前にこの試算をしておくことは、保証保険に入る・入らない以前の安全確認として使える。

保険料はいくらか ― 直接計算してみる

保証料率は保有期間・住宅タイプ・保証金の水準に応じて年0.097%〜0.211%の範囲で決まる。計算式は「保証金額 × 保証料率 × 保証期間 ÷ 365」。チョンセの標準契約期間である2年(730日)で試算すると、次のようになる。

チョンセ保証金年0.097%(最低水準)年0.211%(最高水準)2年間の総額(目安)
2億ウォン年 約19,400円相当年 約42,200円相当約4.1万〜8.9万円相当
3億ウォン年 約29.1万ウォン年 約63.3万ウォン約58万〜127万ウォン
5億ウォン年 約48.5万ウォン年 約105.5万ウォン約97万〜211万ウォン
当研究所試算(保証金額×保証料率×365日で概算、円換算は1万ウォン≒1,050円)。実際の料率は住宅類型・保有期間で個別に決まる。

3億ウォンのチョンセなら、2年間で数十万〜百万ウォン強――保証金全額に対して1〜2%程度の「保険料」で、数億ウォン規模の保証金を公的機関に肩代わりしてもらえる計算になる。保証料は借り手負担が原則だが、ソウル市など自治体が若年層・新婚世帯向けに保証料の一部を補助する制度も別途ある。

本当に機能しているのか ― 事故統計で確認する

制度を信じていいかは、実際の事故データで検証できる。2023年5月の引き締め以降、保証比率90%を超える高リスク帯の事故金額は、3兆3,375億ウォン(2023年5月)から4,120億ウォン(2025年8月)へ、87.6%減少した。全体で見ても、HUGの保証事故は2024年の4兆4,896億ウォン(20,941件)から2025年は1兆2,446億ウォン(6,677件)へ急減。さらに2026年に入り、HUGが回収した債権額が新規の代位弁済額を上回る「ゴールデンクロス」が初めて発生したと報じられている。

2024年2025年増減
保証事故金額4兆4,896億ウォン1兆2,446億ウォン▲72.3%
保証事故件数20,941件6,677件▲68.1%
新規保証供給額67兆2,657億ウォン64兆9,784億ウォン▲3.4%
出典: HUG統計にもとづく韓国各紙報道(財経新聞・ソウル経済TVほか)より当研究所整理。供給額はほぼ横ばいながら事故は大幅減少=審査の質が上がったことを示す。

供給額(新規加入)がほぼ横ばいなのに事故が7割減った、という事実が重要だ。これは「入れる件数を絞った」だけでなく「入れる物件の質を上げた」ことを意味する。賃貸市場のウォルセ化が進む一方で、残るチョンセ市場では安全網が強化されているという、やや意外な二重の構造がいまの韓国にはある。

落とし穴 ― 「入っていれば安心」ではない

保証保険にも限界がある。第一に、審査落ちする物件は加入すらできない――保証比率オーバーの「危ない物件」ほど保険で守られない皮肉がある。第二に、請求までに時間がかかる。契約終了後1か月が経過し、かつ임차권등기명령(賃借権登記命令)が完了して初めて請求できるため、その間の資金繰りは自分で耐える必要がある。第三に、更新のたびに再加入が必要な商品が多く、契約途中で切れていることに気づかないケースもある。保証保険は「絶対の安全」ではなく、「万一の際に取り立てを国に肩代わりしてもらえる」という時間差のある保険だと理解しておくべきだ。

会計の視点で見ると、チョンセ保証金は借り手にとって「大家への貸付金」という資産だ。保証保険とは、その貸付金の信用リスクを、年1〜2%程度のコストで国に移転する取引にほかならない。興味深いのは、この保険が単なる救済策ではなく、審査を通じて「貸してはいけない相手」をあぶり出すフィルターとしても機能している点だ。制度が健全に回っているときほど、保険はむしろ「入れない」ことで危険を教えてくれる。安心はお金で買うものであると同時に、審査に落ちること自体が価値ある情報なのだ。

所長・トナリ

よくある質問

ウォルセでもHUGの保証保険に入れますか?

入れる。ウォルセでも保証金部分(ウォルセ保証金)を対象にした返還保証があり、仕組みはチョンセ版とほぼ同じ。ただしウォルセは保証金自体が小さいことが多く、保険の必要性はチョンセより相対的に低いケースが多い。

大家が保険加入に反対したら入れませんか?

加入自体は借り手が単独で手続きできる商品が主流で、大家の同意が必須ではない場合が多い。ただし物件情報の確認に大家の協力が要ることもあるため、契約時にあらかじめ確認しておくと手続きがスムーズになる。

保証比率オーバーで加入を断られたらどうすればいいですか?

その物件のチョンセ契約自体を見直す材料にすべきだ。登記簿で先順位の抵当権を確認し、保証金の減額交渉やウォルセへの変更を検討する、あるいは物件を変える判断も選択肢に入る。「保険に入れない」という結果を、危険信号として受け止めることが実務上もっとも重要。

日本人がチョンセで部屋を借りる場合も対象になりますか?

外国人(外国人登録済みの在留者など)も一定条件で加入対象になる場合がある。ただし細かな要件は年々変わるため、契約前にHUGの公式窓口または不動産仲介士に最新条件を必ず確認してほしい。

一次資料・参考

  • HUG(住宅都市保証公社)公式サイト: チョンセ保証金返還保証 商品概要・利用手続き
  • 京郷新聞「HUG保証基準緩和がチョンセ詐欺を招いた―再び締めたら事故急減」
  • 租税金融新聞「HUG、今年のチョンセ保証金事故が前年比半減」
  • ファイナンシャルニュース「HUG、今年の債権回収額が代位弁済を上回る『ゴールデンクロス』」

※本記事は制度の構造解説であり、特定の保険加入・契約を勧めるものではありません。保証比率・保証料率・統計数値は執筆時点の公表情報にもとづく概算を含み、今後変更される可能性があります。実際の契約・加入にあたっては、HUG公式窓口や専門家への確認を必ず行ってください。ウォン円換算は概算です。

関連記事 ―「世界を読む」

「チョンセ保証金が返ってこない」――韓国で暮らす、あるいは韓国に部屋を借りる人にとって、これほど不安な言葉はない。だが実は、この不安に対して韓国政府自身が用意した公的な保険がある。HUG(住宅都市保証公社)が運営するチョンセ保証金返還保証だ。契約が終わっても大家がお金を返さないとき、HUGがまず立て替えて払い、あとから大家に取り立てる。2023年の制度引き締め以降、事故件数は実際に急減している。仕組みと入れる条件、保険料の計算、そして「入っていれば絶対安心」ではない落とし穴まで、数字で読み解く。

先に結論。チョンセ保証金返還保証とは、チョンセの保証金が返ってこないとき、HUGが借り手に立て替え払いし、大家から取り立てる公的保険だ。誰でも入れるわけではなく、「保証金が物件価格の一定割合以下」という上限(保証比率)を満たす必要がある。2023年5月にこの上限が100%→90%に引き締められて以降、高リスク帯の事故金額は87.6%減少した。制度は「入るか入らないか」の二択ではなく、「その物件がそもそも入れる物件か」を見極める検査としても機能する。

HUGとは何か ― 国がつくった「保証金の保険」

HUG(Korea Housing & Urban Guarantee Corporation、住宅都市保証公社)は、韓国国土交通部傘下の公的機関だ。チョンセ保証金返還保証の仕組みは単純明快で、①借り手がHUGに保証料を払って加入 → ②契約終了後、大家が保証金を返さない → ③HUGが借り手に全額を立て替え払い → ④HUGが大家(または競売代金)から回収という4段階で動く。大家個人と直接争う必要がなく、公的機関を相手に手続きできる点が最大の利点だ。似た保証は住宅金融公社(HF)や民間のSGIソウル保証保険も扱うが、供給量ではHUGが最大手にあたる。

誰でも入れるわけではない ― 「保証比率」という審査

ここが最も誤解されやすい点だ。HUGは保証金が物件価格に対してどれだけ重いかを審査し、一定ラインを超える物件は加入を断る。基準は「公示価格の140%」を住宅価格とみなし、その90%まで――つまり公示価格の126%が保証金の上限となる。この90%という数字は2023年5月まで100%だった。「チョンセ詐欺」被害が社会問題化したのを受け、HUGは加入基準そのものを引き締めた。

時期保証比率の上限公示価格に対する保証金上限
〜2023年5月100%公示価格の140%
2023年5月〜(現行)90%公示価格の126%
出典: HUG制度改定(2023年5月)にもとづく各社報道より当研究所整理。「126%ルール」と呼ばれることもある。

具体的に試算してみる。公示価格4億ウォンのマンションなら、住宅価格とみなされるのは4億×140%=5.6億ウォン、その90%で保証金上限は約5億400万ウォン。もしこの部屋のチョンセ保証金が5億ウォンなら加入できるが、5.5億ウォンなら上限超過で加入を断られる。つまり「保証保険に入れない」という審査結果そのものが、「この物件は保証金が重すぎる」という警告にもなる。契約前にこの試算をしておくことは、保証保険に入る・入らない以前の安全確認として使える。

保険料はいくらか ― 直接計算してみる

保証料率は保有期間・住宅タイプ・保証金の水準に応じて年0.097%〜0.211%の範囲で決まる。計算式は「保証金額 × 保証料率 × 保証期間 ÷ 365」。チョンセの標準契約期間である2年(730日)で試算すると、次のようになる。

チョンセ保証金年0.097%(最低水準)年0.211%(最高水準)2年間の総額(目安)
2億ウォン年 約19,400円相当年 約42,200円相当約4.1万〜8.9万円相当
3億ウォン年 約29.1万ウォン年 約63.3万ウォン約58万〜127万ウォン
5億ウォン年 約48.5万ウォン年 約105.5万ウォン約97万〜211万ウォン
当研究所試算(保証金額×保証料率×365日で概算、円換算は1万ウォン≒1,050円)。実際の料率は住宅類型・保有期間で個別に決まる。

3億ウォンのチョンセなら、2年間で数十万〜百万ウォン強――保証金全額に対して1〜2%程度の「保険料」で、数億ウォン規模の保証金を公的機関に肩代わりしてもらえる計算になる。保証料は借り手負担が原則だが、ソウル市など自治体が若年層・新婚世帯向けに保証料の一部を補助する制度も別途ある。

本当に機能しているのか ― 事故統計で確認する

制度を信じていいかは、実際の事故データで検証できる。2023年5月の引き締め以降、保証比率90%を超える高リスク帯の事故金額は、3兆3,375億ウォン(2023年5月)から4,120億ウォン(2025年8月)へ、87.6%減少した。全体で見ても、HUGの保証事故は2024年の4兆4,896億ウォン(20,941件)から2025年は1兆2,446億ウォン(6,677件)へ急減。さらに2026年に入り、HUGが回収した債権額が新規の代位弁済額を上回る「ゴールデンクロス」が初めて発生したと報じられている。

2024年2025年増減
保証事故金額4兆4,896億ウォン1兆2,446億ウォン▲72.3%
保証事故件数20,941件6,677件▲68.1%
新規保証供給額67兆2,657億ウォン64兆9,784億ウォン▲3.4%
出典: HUG統計にもとづく韓国各紙報道(財経新聞・ソウル経済TVほか)より当研究所整理。供給額はほぼ横ばいながら事故は大幅減少=審査の質が上がったことを示す。

供給額(新規加入)がほぼ横ばいなのに事故が7割減った、という事実が重要だ。これは「入れる件数を絞った」だけでなく「入れる物件の質を上げた」ことを意味する。賃貸市場のウォルセ化が進む一方で、残るチョンセ市場では安全網が強化されているという、やや意外な二重の構造がいまの韓国にはある。

落とし穴 ― 「入っていれば安心」ではない

保証保険にも限界がある。第一に、審査落ちする物件は加入すらできない――保証比率オーバーの「危ない物件」ほど保険で守られない皮肉がある。第二に、請求までに時間がかかる。契約終了後1か月が経過し、かつ임차권등기명령(賃借権登記命令)が完了して初めて請求できるため、その間の資金繰りは自分で耐える必要がある。第三に、更新のたびに再加入が必要な商品が多く、契約途中で切れていることに気づかないケースもある。保証保険は「絶対の安全」ではなく、「万一の際に取り立てを国に肩代わりしてもらえる」という時間差のある保険だと理解しておくべきだ。

会計の視点で見ると、チョンセ保証金は借り手にとって「大家への貸付金」という資産だ。保証保険とは、その貸付金の信用リスクを、年1〜2%程度のコストで国に移転する取引にほかならない。興味深いのは、この保険が単なる救済策ではなく、審査を通じて「貸してはいけない相手」をあぶり出すフィルターとしても機能している点だ。制度が健全に回っているときほど、保険はむしろ「入れない」ことで危険を教えてくれる。安心はお金で買うものであると同時に、審査に落ちること自体が価値ある情報なのだ。

所長・トナリ

よくある質問

ウォルセでもHUGの保証保険に入れますか?

入れる。ウォルセでも保証金部分(ウォルセ保証金)を対象にした返還保証があり、仕組みはチョンセ版とほぼ同じ。ただしウォルセは保証金自体が小さいことが多く、保険の必要性はチョンセより相対的に低いケースが多い。

大家が保険加入に反対したら入れませんか?

加入自体は借り手が単独で手続きできる商品が主流で、大家の同意が必須ではない場合が多い。ただし物件情報の確認に大家の協力が要ることもあるため、契約時にあらかじめ確認しておくと手続きがスムーズになる。

保証比率オーバーで加入を断られたらどうすればいいですか?

その物件のチョンセ契約自体を見直す材料にすべきだ。登記簿で先順位の抵当権を確認し、保証金の減額交渉やウォルセへの変更を検討する、あるいは物件を変える判断も選択肢に入る。「保険に入れない」という結果を、危険信号として受け止めることが実務上もっとも重要。

日本人がチョンセで部屋を借りる場合も対象になりますか?

外国人(外国人登録済みの在留者など)も一定条件で加入対象になる場合がある。ただし細かな要件は年々変わるため、契約前にHUGの公式窓口または不動産仲介士に最新条件を必ず確認してほしい。

一次資料・参考

  • HUG(住宅都市保証公社)公式サイト: チョンセ保証金返還保証 商品概要・利用手続き
  • 京郷新聞「HUG保証基準緩和がチョンセ詐欺を招いた―再び締めたら事故急減」
  • 租税金融新聞「HUG、今年のチョンセ保証金事故が前年比半減」
  • ファイナンシャルニュース「HUG、今年の債権回収額が代位弁済を上回る『ゴールデンクロス』」

※本記事は制度の構造解説であり、特定の保険加入・契約を勧めるものではありません。保証比率・保証料率・統計数値は執筆時点の公表情報にもとづく概算を含み、今後変更される可能性があります。実際の契約・加入にあたっては、HUG公式窓口や専門家への確認を必ず行ってください。ウォン円換算は概算です。

関連記事 ―「世界を読む」

時期保証比率の上限公示価格に対する保証金上限
〜2023年5月100%公示価格の140%
2023年5月〜(現行)90%公示価格の126%
出典: HUG制度改定(2023年5月)にもとづく各社報道より当研究所整理。「126%ルール」と呼ばれることもある。

具体的に試算してみる。公示価格4億ウォンのマンションなら、住宅価格とみなされるのは4億×140%=5.6億ウォン、その90%で保証金上限は約5億400万ウォン。もしこの部屋のチョンセ保証金が5億ウォンなら加入できるが、5.5億ウォンなら上限超過で加入を断られる。つまり「保証保険に入れない」という審査結果そのものが、「この物件は保証金が重すぎる」という警告にもなる。契約前にこの試算をしておくことは、保証保険に入る・入らない以前の安全確認として使える。

保険料はいくらか ― 直接計算してみる

保証料率は保有期間・住宅タイプ・保証金の水準に応じて年0.097%〜0.211%の範囲で決まる。計算式は「保証金額 × 保証料率 × 保証期間 ÷ 365」。チョンセの標準契約期間である2年(730日)で試算すると、次のようになる。

チョンセ保証金年0.097%(最低水準)年0.211%(最高水準)2年間の総額(目安)
2億ウォン年 約19,400円相当年 約42,200円相当約4.1万〜8.9万円相当
3億ウォン年 約29.1万ウォン年 約63.3万ウォン約58万〜127万ウォン
5億ウォン年 約48.5万ウォン年 約105.5万ウォン約97万〜211万ウォン
当研究所試算(保証金額×保証料率×365日で概算、円換算は1万ウォン≒1,050円)。実際の料率は住宅類型・保有期間で個別に決まる。

3億ウォンのチョンセなら、2年間で数十万〜百万ウォン強――保証金全額に対して1〜2%程度の「保険料」で、数億ウォン規模の保証金を公的機関に肩代わりしてもらえる計算になる。保証料は借り手負担が原則だが、ソウル市など自治体が若年層・新婚世帯向けに保証料の一部を補助する制度も別途ある。

本当に機能しているのか ― 事故統計で確認する

制度を信じていいかは、実際の事故データで検証できる。2023年5月の引き締め以降、保証比率90%を超える高リスク帯の事故金額は、3兆3,375億ウォン(2023年5月)から4,120億ウォン(2025年8月)へ、87.6%減少した。全体で見ても、HUGの保証事故は2024年の4兆4,896億ウォン(20,941件)から2025年は1兆2,446億ウォン(6,677件)へ急減。さらに2026年に入り、HUGが回収した債権額が新規の代位弁済額を上回る「ゴールデンクロス」が初めて発生したと報じられている。

2024年2025年増減
保証事故金額4兆4,896億ウォン1兆2,446億ウォン▲72.3%
保証事故件数20,941件6,677件▲68.1%
新規保証供給額67兆2,657億ウォン64兆9,784億ウォン▲3.4%
出典: HUG統計にもとづく韓国各紙報道(財経新聞・ソウル経済TVほか)より当研究所整理。供給額はほぼ横ばいながら事故は大幅減少=審査の質が上がったことを示す。

供給額(新規加入)がほぼ横ばいなのに事故が7割減った、という事実が重要だ。これは「入れる件数を絞った」だけでなく「入れる物件の質を上げた」ことを意味する。賃貸市場のウォルセ化が進む一方で、残るチョンセ市場では安全網が強化されているという、やや意外な二重の構造がいまの韓国にはある。

落とし穴 ― 「入っていれば安心」ではない

保証保険にも限界がある。第一に、審査落ちする物件は加入すらできない――保証比率オーバーの「危ない物件」ほど保険で守られない皮肉がある。第二に、請求までに時間がかかる。契約終了後1か月が経過し、かつ임차권등기명령(賃借権登記命令)が完了して初めて請求できるため、その間の資金繰りは自分で耐える必要がある。第三に、更新のたびに再加入が必要な商品が多く、契約途中で切れていることに気づかないケースもある。保証保険は「絶対の安全」ではなく、「万一の際に取り立てを国に肩代わりしてもらえる」という時間差のある保険だと理解しておくべきだ。

会計の視点で見ると、チョンセ保証金は借り手にとって「大家への貸付金」という資産だ。保証保険とは、その貸付金の信用リスクを、年1〜2%程度のコストで国に移転する取引にほかならない。興味深いのは、この保険が単なる救済策ではなく、審査を通じて「貸してはいけない相手」をあぶり出すフィルターとしても機能している点だ。制度が健全に回っているときほど、保険はむしろ「入れない」ことで危険を教えてくれる。安心はお金で買うものであると同時に、審査に落ちること自体が価値ある情報なのだ。

所長・トナリ

よくある質問

ウォルセでもHUGの保証保険に入れますか?

入れる。ウォルセでも保証金部分(ウォルセ保証金)を対象にした返還保証があり、仕組みはチョンセ版とほぼ同じ。ただしウォルセは保証金自体が小さいことが多く、保険の必要性はチョンセより相対的に低いケースが多い。

大家が保険加入に反対したら入れませんか?

加入自体は借り手が単独で手続きできる商品が主流で、大家の同意が必須ではない場合が多い。ただし物件情報の確認に大家の協力が要ることもあるため、契約時にあらかじめ確認しておくと手続きがスムーズになる。

保証比率オーバーで加入を断られたらどうすればいいですか?

その物件のチョンセ契約自体を見直す材料にすべきだ。登記簿で先順位の抵当権を確認し、保証金の減額交渉やウォルセへの変更を検討する、あるいは物件を変える判断も選択肢に入る。「保険に入れない」という結果を、危険信号として受け止めることが実務上もっとも重要。

日本人がチョンセで部屋を借りる場合も対象になりますか?

外国人(外国人登録済みの在留者など)も一定条件で加入対象になる場合がある。ただし細かな要件は年々変わるため、契約前にHUGの公式窓口または不動産仲介士に最新条件を必ず確認してほしい。

一次資料・参考

  • HUG(住宅都市保証公社)公式サイト: チョンセ保証金返還保証 商品概要・利用手続き
  • 京郷新聞「HUG保証基準緩和がチョンセ詐欺を招いた―再び締めたら事故急減」
  • 租税金融新聞「HUG、今年のチョンセ保証金事故が前年比半減」
  • ファイナンシャルニュース「HUG、今年の債権回収額が代位弁済を上回る『ゴールデンクロス』」

※本記事は制度の構造解説であり、特定の保険加入・契約を勧めるものではありません。保証比率・保証料率・統計数値は執筆時点の公表情報にもとづく概算を含み、今後変更される可能性があります。実際の契約・加入にあたっては、HUG公式窓口や専門家への確認を必ず行ってください。ウォン円換算は概算です。

関連記事 ―「世界を読む」

「チョンセ保証金が返ってこない」――韓国で暮らす、あるいは韓国に部屋を借りる人にとって、これほど不安な言葉はない。だが実は、この不安に対して韓国政府自身が用意した公的な保険がある。HUG(住宅都市保証公社)が運営するチョンセ保証金返還保証だ。契約が終わっても大家がお金を返さないとき、HUGがまず立て替えて払い、あとから大家に取り立てる。2023年の制度引き締め以降、事故件数は実際に急減している。仕組みと入れる条件、保険料の計算、そして「入っていれば絶対安心」ではない落とし穴まで、数字で読み解く。

先に結論。チョンセ保証金返還保証とは、チョンセの保証金が返ってこないとき、HUGが借り手に立て替え払いし、大家から取り立てる公的保険だ。誰でも入れるわけではなく、「保証金が物件価格の一定割合以下」という上限(保証比率)を満たす必要がある。2023年5月にこの上限が100%→90%に引き締められて以降、高リスク帯の事故金額は87.6%減少した。制度は「入るか入らないか」の二択ではなく、「その物件がそもそも入れる物件か」を見極める検査としても機能する。

HUGとは何か ― 国がつくった「保証金の保険」

HUG(Korea Housing & Urban Guarantee Corporation、住宅都市保証公社)は、韓国国土交通部傘下の公的機関だ。チョンセ保証金返還保証の仕組みは単純明快で、①借り手がHUGに保証料を払って加入 → ②契約終了後、大家が保証金を返さない → ③HUGが借り手に全額を立て替え払い → ④HUGが大家(または競売代金)から回収という4段階で動く。大家個人と直接争う必要がなく、公的機関を相手に手続きできる点が最大の利点だ。似た保証は住宅金融公社(HF)や民間のSGIソウル保証保険も扱うが、供給量ではHUGが最大手にあたる。

誰でも入れるわけではない ― 「保証比率」という審査

ここが最も誤解されやすい点だ。HUGは保証金が物件価格に対してどれだけ重いかを審査し、一定ラインを超える物件は加入を断る。基準は「公示価格の140%」を住宅価格とみなし、その90%まで――つまり公示価格の126%が保証金の上限となる。この90%という数字は2023年5月まで100%だった。「チョンセ詐欺」被害が社会問題化したのを受け、HUGは加入基準そのものを引き締めた。

時期保証比率の上限公示価格に対する保証金上限
〜2023年5月100%公示価格の140%
2023年5月〜(現行)90%公示価格の126%
出典: HUG制度改定(2023年5月)にもとづく各社報道より当研究所整理。「126%ルール」と呼ばれることもある。

具体的に試算してみる。公示価格4億ウォンのマンションなら、住宅価格とみなされるのは4億×140%=5.6億ウォン、その90%で保証金上限は約5億400万ウォン。もしこの部屋のチョンセ保証金が5億ウォンなら加入できるが、5.5億ウォンなら上限超過で加入を断られる。つまり「保証保険に入れない」という審査結果そのものが、「この物件は保証金が重すぎる」という警告にもなる。契約前にこの試算をしておくことは、保証保険に入る・入らない以前の安全確認として使える。

保険料はいくらか ― 直接計算してみる

保証料率は保有期間・住宅タイプ・保証金の水準に応じて年0.097%〜0.211%の範囲で決まる。計算式は「保証金額 × 保証料率 × 保証期間 ÷ 365」。チョンセの標準契約期間である2年(730日)で試算すると、次のようになる。

チョンセ保証金年0.097%(最低水準)年0.211%(最高水準)2年間の総額(目安)
2億ウォン年 約19,400円相当年 約42,200円相当約4.1万〜8.9万円相当
3億ウォン年 約29.1万ウォン年 約63.3万ウォン約58万〜127万ウォン
5億ウォン年 約48.5万ウォン年 約105.5万ウォン約97万〜211万ウォン
当研究所試算(保証金額×保証料率×365日で概算、円換算は1万ウォン≒1,050円)。実際の料率は住宅類型・保有期間で個別に決まる。

3億ウォンのチョンセなら、2年間で数十万〜百万ウォン強――保証金全額に対して1〜2%程度の「保険料」で、数億ウォン規模の保証金を公的機関に肩代わりしてもらえる計算になる。保証料は借り手負担が原則だが、ソウル市など自治体が若年層・新婚世帯向けに保証料の一部を補助する制度も別途ある。

本当に機能しているのか ― 事故統計で確認する

制度を信じていいかは、実際の事故データで検証できる。2023年5月の引き締め以降、保証比率90%を超える高リスク帯の事故金額は、3兆3,375億ウォン(2023年5月)から4,120億ウォン(2025年8月)へ、87.6%減少した。全体で見ても、HUGの保証事故は2024年の4兆4,896億ウォン(20,941件)から2025年は1兆2,446億ウォン(6,677件)へ急減。さらに2026年に入り、HUGが回収した債権額が新規の代位弁済額を上回る「ゴールデンクロス」が初めて発生したと報じられている。

2024年2025年増減
保証事故金額4兆4,896億ウォン1兆2,446億ウォン▲72.3%
保証事故件数20,941件6,677件▲68.1%
新規保証供給額67兆2,657億ウォン64兆9,784億ウォン▲3.4%
出典: HUG統計にもとづく韓国各紙報道(財経新聞・ソウル経済TVほか)より当研究所整理。供給額はほぼ横ばいながら事故は大幅減少=審査の質が上がったことを示す。

供給額(新規加入)がほぼ横ばいなのに事故が7割減った、という事実が重要だ。これは「入れる件数を絞った」だけでなく「入れる物件の質を上げた」ことを意味する。賃貸市場のウォルセ化が進む一方で、残るチョンセ市場では安全網が強化されているという、やや意外な二重の構造がいまの韓国にはある。

落とし穴 ― 「入っていれば安心」ではない

保証保険にも限界がある。第一に、審査落ちする物件は加入すらできない――保証比率オーバーの「危ない物件」ほど保険で守られない皮肉がある。第二に、請求までに時間がかかる。契約終了後1か月が経過し、かつ임차권등기명령(賃借権登記命令)が完了して初めて請求できるため、その間の資金繰りは自分で耐える必要がある。第三に、更新のたびに再加入が必要な商品が多く、契約途中で切れていることに気づかないケースもある。保証保険は「絶対の安全」ではなく、「万一の際に取り立てを国に肩代わりしてもらえる」という時間差のある保険だと理解しておくべきだ。

会計の視点で見ると、チョンセ保証金は借り手にとって「大家への貸付金」という資産だ。保証保険とは、その貸付金の信用リスクを、年1〜2%程度のコストで国に移転する取引にほかならない。興味深いのは、この保険が単なる救済策ではなく、審査を通じて「貸してはいけない相手」をあぶり出すフィルターとしても機能している点だ。制度が健全に回っているときほど、保険はむしろ「入れない」ことで危険を教えてくれる。安心はお金で買うものであると同時に、審査に落ちること自体が価値ある情報なのだ。

所長・トナリ

よくある質問

ウォルセでもHUGの保証保険に入れますか?

入れる。ウォルセでも保証金部分(ウォルセ保証金)を対象にした返還保証があり、仕組みはチョンセ版とほぼ同じ。ただしウォルセは保証金自体が小さいことが多く、保険の必要性はチョンセより相対的に低いケースが多い。

大家が保険加入に反対したら入れませんか?

加入自体は借り手が単独で手続きできる商品が主流で、大家の同意が必須ではない場合が多い。ただし物件情報の確認に大家の協力が要ることもあるため、契約時にあらかじめ確認しておくと手続きがスムーズになる。

保証比率オーバーで加入を断られたらどうすればいいですか?

その物件のチョンセ契約自体を見直す材料にすべきだ。登記簿で先順位の抵当権を確認し、保証金の減額交渉やウォルセへの変更を検討する、あるいは物件を変える判断も選択肢に入る。「保険に入れない」という結果を、危険信号として受け止めることが実務上もっとも重要。

日本人がチョンセで部屋を借りる場合も対象になりますか?

外国人(外国人登録済みの在留者など)も一定条件で加入対象になる場合がある。ただし細かな要件は年々変わるため、契約前にHUGの公式窓口または不動産仲介士に最新条件を必ず確認してほしい。

一次資料・参考

  • HUG(住宅都市保証公社)公式サイト: チョンセ保証金返還保証 商品概要・利用手続き
  • 京郷新聞「HUG保証基準緩和がチョンセ詐欺を招いた―再び締めたら事故急減」
  • 租税金融新聞「HUG、今年のチョンセ保証金事故が前年比半減」
  • ファイナンシャルニュース「HUG、今年の債権回収額が代位弁済を上回る『ゴールデンクロス』」

※本記事は制度の構造解説であり、特定の保険加入・契約を勧めるものではありません。保証比率・保証料率・統計数値は執筆時点の公表情報にもとづく概算を含み、今後変更される可能性があります。実際の契約・加入にあたっては、HUG公式窓口や専門家への確認を必ず行ってください。ウォン円換算は概算です。

関連記事 ―「世界を読む」

「チョンセ保証金が返ってこない」――韓国で暮らす、あるいは韓国に部屋を借りる人にとって、これほど不安な言葉はない。だが実は、この不安に対して韓国政府自身が用意した公的な保険がある。HUG(住宅都市保証公社)が運営するチョンセ保証金返還保証だ。契約が終わっても大家がお金を返さないとき、HUGがまず立て替えて払い、あとから大家に取り立てる。2023年の制度引き締め以降、事故件数は実際に急減している。仕組みと入れる条件、保険料の計算、そして「入っていれば絶対安心」ではない落とし穴まで、数字で読み解く。

先に結論。チョンセ保証金返還保証とは、チョンセの保証金が返ってこないとき、HUGが借り手に立て替え払いし、大家から取り立てる公的保険だ。誰でも入れるわけではなく、「保証金が物件価格の一定割合以下」という上限(保証比率)を満たす必要がある。2023年5月にこの上限が100%→90%に引き締められて以降、高リスク帯の事故金額は87.6%減少した。制度は「入るか入らないか」の二択ではなく、「その物件がそもそも入れる物件か」を見極める検査としても機能する。

HUGとは何か ― 国がつくった「保証金の保険」

HUG(Korea Housing & Urban Guarantee Corporation、住宅都市保証公社)は、韓国国土交通部傘下の公的機関だ。チョンセ保証金返還保証の仕組みは単純明快で、①借り手がHUGに保証料を払って加入 → ②契約終了後、大家が保証金を返さない → ③HUGが借り手に全額を立て替え払い → ④HUGが大家(または競売代金)から回収という4段階で動く。大家個人と直接争う必要がなく、公的機関を相手に手続きできる点が最大の利点だ。似た保証は住宅金融公社(HF)や民間のSGIソウル保証保険も扱うが、供給量ではHUGが最大手にあたる。

誰でも入れるわけではない ― 「保証比率」という審査

ここが最も誤解されやすい点だ。HUGは保証金が物件価格に対してどれだけ重いかを審査し、一定ラインを超える物件は加入を断る。基準は「公示価格の140%」を住宅価格とみなし、その90%まで――つまり公示価格の126%が保証金の上限となる。この90%という数字は2023年5月まで100%だった。「チョンセ詐欺」被害が社会問題化したのを受け、HUGは加入基準そのものを引き締めた。

時期保証比率の上限公示価格に対する保証金上限
〜2023年5月100%公示価格の140%
2023年5月〜(現行)90%公示価格の126%
出典: HUG制度改定(2023年5月)にもとづく各社報道より当研究所整理。「126%ルール」と呼ばれることもある。

具体的に試算してみる。公示価格4億ウォンのマンションなら、住宅価格とみなされるのは4億×140%=5.6億ウォン、その90%で保証金上限は約5億400万ウォン。もしこの部屋のチョンセ保証金が5億ウォンなら加入できるが、5.5億ウォンなら上限超過で加入を断られる。つまり「保証保険に入れない」という審査結果そのものが、「この物件は保証金が重すぎる」という警告にもなる。契約前にこの試算をしておくことは、保証保険に入る・入らない以前の安全確認として使える。

保険料はいくらか ― 直接計算してみる

保証料率は保有期間・住宅タイプ・保証金の水準に応じて年0.097%〜0.211%の範囲で決まる。計算式は「保証金額 × 保証料率 × 保証期間 ÷ 365」。チョンセの標準契約期間である2年(730日)で試算すると、次のようになる。

チョンセ保証金年0.097%(最低水準)年0.211%(最高水準)2年間の総額(目安)
2億ウォン年 約19,400円相当年 約42,200円相当約4.1万〜8.9万円相当
3億ウォン年 約29.1万ウォン年 約63.3万ウォン約58万〜127万ウォン
5億ウォン年 約48.5万ウォン年 約105.5万ウォン約97万〜211万ウォン
当研究所試算(保証金額×保証料率×365日で概算、円換算は1万ウォン≒1,050円)。実際の料率は住宅類型・保有期間で個別に決まる。

3億ウォンのチョンセなら、2年間で数十万〜百万ウォン強――保証金全額に対して1〜2%程度の「保険料」で、数億ウォン規模の保証金を公的機関に肩代わりしてもらえる計算になる。保証料は借り手負担が原則だが、ソウル市など自治体が若年層・新婚世帯向けに保証料の一部を補助する制度も別途ある。

本当に機能しているのか ― 事故統計で確認する

制度を信じていいかは、実際の事故データで検証できる。2023年5月の引き締め以降、保証比率90%を超える高リスク帯の事故金額は、3兆3,375億ウォン(2023年5月)から4,120億ウォン(2025年8月)へ、87.6%減少した。全体で見ても、HUGの保証事故は2024年の4兆4,896億ウォン(20,941件)から2025年は1兆2,446億ウォン(6,677件)へ急減。さらに2026年に入り、HUGが回収した債権額が新規の代位弁済額を上回る「ゴールデンクロス」が初めて発生したと報じられている。

2024年2025年増減
保証事故金額4兆4,896億ウォン1兆2,446億ウォン▲72.3%
保証事故件数20,941件6,677件▲68.1%
新規保証供給額67兆2,657億ウォン64兆9,784億ウォン▲3.4%
出典: HUG統計にもとづく韓国各紙報道(財経新聞・ソウル経済TVほか)より当研究所整理。供給額はほぼ横ばいながら事故は大幅減少=審査の質が上がったことを示す。

供給額(新規加入)がほぼ横ばいなのに事故が7割減った、という事実が重要だ。これは「入れる件数を絞った」だけでなく「入れる物件の質を上げた」ことを意味する。賃貸市場のウォルセ化が進む一方で、残るチョンセ市場では安全網が強化されているという、やや意外な二重の構造がいまの韓国にはある。

落とし穴 ― 「入っていれば安心」ではない

保証保険にも限界がある。第一に、審査落ちする物件は加入すらできない――保証比率オーバーの「危ない物件」ほど保険で守られない皮肉がある。第二に、請求までに時間がかかる。契約終了後1か月が経過し、かつ임차권등기명령(賃借権登記命令)が完了して初めて請求できるため、その間の資金繰りは自分で耐える必要がある。第三に、更新のたびに再加入が必要な商品が多く、契約途中で切れていることに気づかないケースもある。保証保険は「絶対の安全」ではなく、「万一の際に取り立てを国に肩代わりしてもらえる」という時間差のある保険だと理解しておくべきだ。

会計の視点で見ると、チョンセ保証金は借り手にとって「大家への貸付金」という資産だ。保証保険とは、その貸付金の信用リスクを、年1〜2%程度のコストで国に移転する取引にほかならない。興味深いのは、この保険が単なる救済策ではなく、審査を通じて「貸してはいけない相手」をあぶり出すフィルターとしても機能している点だ。制度が健全に回っているときほど、保険はむしろ「入れない」ことで危険を教えてくれる。安心はお金で買うものであると同時に、審査に落ちること自体が価値ある情報なのだ。

所長・トナリ

よくある質問

ウォルセでもHUGの保証保険に入れますか?

入れる。ウォルセでも保証金部分(ウォルセ保証金)を対象にした返還保証があり、仕組みはチョンセ版とほぼ同じ。ただしウォルセは保証金自体が小さいことが多く、保険の必要性はチョンセより相対的に低いケースが多い。

大家が保険加入に反対したら入れませんか?

加入自体は借り手が単独で手続きできる商品が主流で、大家の同意が必須ではない場合が多い。ただし物件情報の確認に大家の協力が要ることもあるため、契約時にあらかじめ確認しておくと手続きがスムーズになる。

保証比率オーバーで加入を断られたらどうすればいいですか?

その物件のチョンセ契約自体を見直す材料にすべきだ。登記簿で先順位の抵当権を確認し、保証金の減額交渉やウォルセへの変更を検討する、あるいは物件を変える判断も選択肢に入る。「保険に入れない」という結果を、危険信号として受け止めることが実務上もっとも重要。

日本人がチョンセで部屋を借りる場合も対象になりますか?

外国人(外国人登録済みの在留者など)も一定条件で加入対象になる場合がある。ただし細かな要件は年々変わるため、契約前にHUGの公式窓口または不動産仲介士に最新条件を必ず確認してほしい。

一次資料・参考

  • HUG(住宅都市保証公社)公式サイト: チョンセ保証金返還保証 商品概要・利用手続き
  • 京郷新聞「HUG保証基準緩和がチョンセ詐欺を招いた―再び締めたら事故急減」
  • 租税金融新聞「HUG、今年のチョンセ保証金事故が前年比半減」
  • ファイナンシャルニュース「HUG、今年の債権回収額が代位弁済を上回る『ゴールデンクロス』」

※本記事は制度の構造解説であり、特定の保険加入・契約を勧めるものではありません。保証比率・保証料率・統計数値は執筆時点の公表情報にもとづく概算を含み、今後変更される可能性があります。実際の契約・加入にあたっては、HUG公式窓口や専門家への確認を必ず行ってください。ウォン円換算は概算です。

関連記事 ―「世界を読む」

時期保証比率の上限公示価格に対する保証金上限
〜2023年5月100%公示価格の140%
2023年5月〜(現行)90%公示価格の126%
出典: HUG制度改定(2023年5月)にもとづく各社報道より当研究所整理。「126%ルール」と呼ばれることもある。

具体的に試算してみる。公示価格4億ウォンのマンションなら、住宅価格とみなされるのは4億×140%=5.6億ウォン、その90%で保証金上限は約5億400万ウォン。もしこの部屋のチョンセ保証金が5億ウォンなら加入できるが、5.5億ウォンなら上限超過で加入を断られる。つまり「保証保険に入れない」という審査結果そのものが、「この物件は保証金が重すぎる」という警告にもなる。契約前にこの試算をしておくことは、保証保険に入る・入らない以前の安全確認として使える。

保険料はいくらか ― 直接計算してみる

保証料率は保有期間・住宅タイプ・保証金の水準に応じて年0.097%〜0.211%の範囲で決まる。計算式は「保証金額 × 保証料率 × 保証期間 ÷ 365」。チョンセの標準契約期間である2年(730日)で試算すると、次のようになる。

チョンセ保証金年0.097%(最低水準)年0.211%(最高水準)2年間の総額(目安)
2億ウォン年 約19,400円相当年 約42,200円相当約4.1万〜8.9万円相当
3億ウォン年 約29.1万ウォン年 約63.3万ウォン約58万〜127万ウォン
5億ウォン年 約48.5万ウォン年 約105.5万ウォン約97万〜211万ウォン
当研究所試算(保証金額×保証料率×365日で概算、円換算は1万ウォン≒1,050円)。実際の料率は住宅類型・保有期間で個別に決まる。

3億ウォンのチョンセなら、2年間で数十万〜百万ウォン強――保証金全額に対して1〜2%程度の「保険料」で、数億ウォン規模の保証金を公的機関に肩代わりしてもらえる計算になる。保証料は借り手負担が原則だが、ソウル市など自治体が若年層・新婚世帯向けに保証料の一部を補助する制度も別途ある。

本当に機能しているのか ― 事故統計で確認する

制度を信じていいかは、実際の事故データで検証できる。2023年5月の引き締め以降、保証比率90%を超える高リスク帯の事故金額は、3兆3,375億ウォン(2023年5月)から4,120億ウォン(2025年8月)へ、87.6%減少した。全体で見ても、HUGの保証事故は2024年の4兆4,896億ウォン(20,941件)から2025年は1兆2,446億ウォン(6,677件)へ急減。さらに2026年に入り、HUGが回収した債権額が新規の代位弁済額を上回る「ゴールデンクロス」が初めて発生したと報じられている。

2024年2025年増減
保証事故金額4兆4,896億ウォン1兆2,446億ウォン▲72.3%
保証事故件数20,941件6,677件▲68.1%
新規保証供給額67兆2,657億ウォン64兆9,784億ウォン▲3.4%
出典: HUG統計にもとづく韓国各紙報道(財経新聞・ソウル経済TVほか)より当研究所整理。供給額はほぼ横ばいながら事故は大幅減少=審査の質が上がったことを示す。

供給額(新規加入)がほぼ横ばいなのに事故が7割減った、という事実が重要だ。これは「入れる件数を絞った」だけでなく「入れる物件の質を上げた」ことを意味する。賃貸市場のウォルセ化が進む一方で、残るチョンセ市場では安全網が強化されているという、やや意外な二重の構造がいまの韓国にはある。

落とし穴 ― 「入っていれば安心」ではない

保証保険にも限界がある。第一に、審査落ちする物件は加入すらできない――保証比率オーバーの「危ない物件」ほど保険で守られない皮肉がある。第二に、請求までに時間がかかる。契約終了後1か月が経過し、かつ임차권등기명령(賃借権登記命令)が完了して初めて請求できるため、その間の資金繰りは自分で耐える必要がある。第三に、更新のたびに再加入が必要な商品が多く、契約途中で切れていることに気づかないケースもある。保証保険は「絶対の安全」ではなく、「万一の際に取り立てを国に肩代わりしてもらえる」という時間差のある保険だと理解しておくべきだ。

会計の視点で見ると、チョンセ保証金は借り手にとって「大家への貸付金」という資産だ。保証保険とは、その貸付金の信用リスクを、年1〜2%程度のコストで国に移転する取引にほかならない。興味深いのは、この保険が単なる救済策ではなく、審査を通じて「貸してはいけない相手」をあぶり出すフィルターとしても機能している点だ。制度が健全に回っているときほど、保険はむしろ「入れない」ことで危険を教えてくれる。安心はお金で買うものであると同時に、審査に落ちること自体が価値ある情報なのだ。

所長・トナリ

よくある質問

ウォルセでもHUGの保証保険に入れますか?

入れる。ウォルセでも保証金部分(ウォルセ保証金)を対象にした返還保証があり、仕組みはチョンセ版とほぼ同じ。ただしウォルセは保証金自体が小さいことが多く、保険の必要性はチョンセより相対的に低いケースが多い。

大家が保険加入に反対したら入れませんか?

加入自体は借り手が単独で手続きできる商品が主流で、大家の同意が必須ではない場合が多い。ただし物件情報の確認に大家の協力が要ることもあるため、契約時にあらかじめ確認しておくと手続きがスムーズになる。

保証比率オーバーで加入を断られたらどうすればいいですか?

その物件のチョンセ契約自体を見直す材料にすべきだ。登記簿で先順位の抵当権を確認し、保証金の減額交渉やウォルセへの変更を検討する、あるいは物件を変える判断も選択肢に入る。「保険に入れない」という結果を、危険信号として受け止めることが実務上もっとも重要。

日本人がチョンセで部屋を借りる場合も対象になりますか?

外国人(外国人登録済みの在留者など)も一定条件で加入対象になる場合がある。ただし細かな要件は年々変わるため、契約前にHUGの公式窓口または不動産仲介士に最新条件を必ず確認してほしい。

一次資料・参考

  • HUG(住宅都市保証公社)公式サイト: チョンセ保証金返還保証 商品概要・利用手続き
  • 京郷新聞「HUG保証基準緩和がチョンセ詐欺を招いた―再び締めたら事故急減」
  • 租税金融新聞「HUG、今年のチョンセ保証金事故が前年比半減」
  • ファイナンシャルニュース「HUG、今年の債権回収額が代位弁済を上回る『ゴールデンクロス』」

※本記事は制度の構造解説であり、特定の保険加入・契約を勧めるものではありません。保証比率・保証料率・統計数値は執筆時点の公表情報にもとづく概算を含み、今後変更される可能性があります。実際の契約・加入にあたっては、HUG公式窓口や専門家への確認を必ず行ってください。ウォン円換算は概算です。

関連記事 ―「世界を読む」

「チョンセ保証金が返ってこない」――韓国で暮らす、あるいは韓国に部屋を借りる人にとって、これほど不安な言葉はない。だが実は、この不安に対して韓国政府自身が用意した公的な保険がある。HUG(住宅都市保証公社)が運営するチョンセ保証金返還保証だ。契約が終わっても大家がお金を返さないとき、HUGがまず立て替えて払い、あとから大家に取り立てる。2023年の制度引き締め以降、事故件数は実際に急減している。仕組みと入れる条件、保険料の計算、そして「入っていれば絶対安心」ではない落とし穴まで、数字で読み解く。

先に結論。チョンセ保証金返還保証とは、チョンセの保証金が返ってこないとき、HUGが借り手に立て替え払いし、大家から取り立てる公的保険だ。誰でも入れるわけではなく、「保証金が物件価格の一定割合以下」という上限(保証比率)を満たす必要がある。2023年5月にこの上限が100%→90%に引き締められて以降、高リスク帯の事故金額は87.6%減少した。制度は「入るか入らないか」の二択ではなく、「その物件がそもそも入れる物件か」を見極める検査としても機能する。

HUGとは何か ― 国がつくった「保証金の保険」

HUG(Korea Housing & Urban Guarantee Corporation、住宅都市保証公社)は、韓国国土交通部傘下の公的機関だ。チョンセ保証金返還保証の仕組みは単純明快で、①借り手がHUGに保証料を払って加入 → ②契約終了後、大家が保証金を返さない → ③HUGが借り手に全額を立て替え払い → ④HUGが大家(または競売代金)から回収という4段階で動く。大家個人と直接争う必要がなく、公的機関を相手に手続きできる点が最大の利点だ。似た保証は住宅金融公社(HF)や民間のSGIソウル保証保険も扱うが、供給量ではHUGが最大手にあたる。

誰でも入れるわけではない ― 「保証比率」という審査

ここが最も誤解されやすい点だ。HUGは保証金が物件価格に対してどれだけ重いかを審査し、一定ラインを超える物件は加入を断る。基準は「公示価格の140%」を住宅価格とみなし、その90%まで――つまり公示価格の126%が保証金の上限となる。この90%という数字は2023年5月まで100%だった。「チョンセ詐欺」被害が社会問題化したのを受け、HUGは加入基準そのものを引き締めた。

時期保証比率の上限公示価格に対する保証金上限
〜2023年5月100%公示価格の140%
2023年5月〜(現行)90%公示価格の126%
出典: HUG制度改定(2023年5月)にもとづく各社報道より当研究所整理。「126%ルール」と呼ばれることもある。

具体的に試算してみる。公示価格4億ウォンのマンションなら、住宅価格とみなされるのは4億×140%=5.6億ウォン、その90%で保証金上限は約5億400万ウォン。もしこの部屋のチョンセ保証金が5億ウォンなら加入できるが、5.5億ウォンなら上限超過で加入を断られる。つまり「保証保険に入れない」という審査結果そのものが、「この物件は保証金が重すぎる」という警告にもなる。契約前にこの試算をしておくことは、保証保険に入る・入らない以前の安全確認として使える。

保険料はいくらか ― 直接計算してみる

保証料率は保有期間・住宅タイプ・保証金の水準に応じて年0.097%〜0.211%の範囲で決まる。計算式は「保証金額 × 保証料率 × 保証期間 ÷ 365」。チョンセの標準契約期間である2年(730日)で試算すると、次のようになる。

チョンセ保証金年0.097%(最低水準)年0.211%(最高水準)2年間の総額(目安)
2億ウォン年 約19,400円相当年 約42,200円相当約4.1万〜8.9万円相当
3億ウォン年 約29.1万ウォン年 約63.3万ウォン約58万〜127万ウォン
5億ウォン年 約48.5万ウォン年 約105.5万ウォン約97万〜211万ウォン
当研究所試算(保証金額×保証料率×365日で概算、円換算は1万ウォン≒1,050円)。実際の料率は住宅類型・保有期間で個別に決まる。

3億ウォンのチョンセなら、2年間で数十万〜百万ウォン強――保証金全額に対して1〜2%程度の「保険料」で、数億ウォン規模の保証金を公的機関に肩代わりしてもらえる計算になる。保証料は借り手負担が原則だが、ソウル市など自治体が若年層・新婚世帯向けに保証料の一部を補助する制度も別途ある。

本当に機能しているのか ― 事故統計で確認する

制度を信じていいかは、実際の事故データで検証できる。2023年5月の引き締め以降、保証比率90%を超える高リスク帯の事故金額は、3兆3,375億ウォン(2023年5月)から4,120億ウォン(2025年8月)へ、87.6%減少した。全体で見ても、HUGの保証事故は2024年の4兆4,896億ウォン(20,941件)から2025年は1兆2,446億ウォン(6,677件)へ急減。さらに2026年に入り、HUGが回収した債権額が新規の代位弁済額を上回る「ゴールデンクロス」が初めて発生したと報じられている。

2024年2025年増減
保証事故金額4兆4,896億ウォン1兆2,446億ウォン▲72.3%
保証事故件数20,941件6,677件▲68.1%
新規保証供給額67兆2,657億ウォン64兆9,784億ウォン▲3.4%
出典: HUG統計にもとづく韓国各紙報道(財経新聞・ソウル経済TVほか)より当研究所整理。供給額はほぼ横ばいながら事故は大幅減少=審査の質が上がったことを示す。

供給額(新規加入)がほぼ横ばいなのに事故が7割減った、という事実が重要だ。これは「入れる件数を絞った」だけでなく「入れる物件の質を上げた」ことを意味する。賃貸市場のウォルセ化が進む一方で、残るチョンセ市場では安全網が強化されているという、やや意外な二重の構造がいまの韓国にはある。

落とし穴 ― 「入っていれば安心」ではない

保証保険にも限界がある。第一に、審査落ちする物件は加入すらできない――保証比率オーバーの「危ない物件」ほど保険で守られない皮肉がある。第二に、請求までに時間がかかる。契約終了後1か月が経過し、かつ임차권등기명령(賃借権登記命令)が完了して初めて請求できるため、その間の資金繰りは自分で耐える必要がある。第三に、更新のたびに再加入が必要な商品が多く、契約途中で切れていることに気づかないケースもある。保証保険は「絶対の安全」ではなく、「万一の際に取り立てを国に肩代わりしてもらえる」という時間差のある保険だと理解しておくべきだ。

会計の視点で見ると、チョンセ保証金は借り手にとって「大家への貸付金」という資産だ。保証保険とは、その貸付金の信用リスクを、年1〜2%程度のコストで国に移転する取引にほかならない。興味深いのは、この保険が単なる救済策ではなく、審査を通じて「貸してはいけない相手」をあぶり出すフィルターとしても機能している点だ。制度が健全に回っているときほど、保険はむしろ「入れない」ことで危険を教えてくれる。安心はお金で買うものであると同時に、審査に落ちること自体が価値ある情報なのだ。

所長・トナリ

よくある質問

ウォルセでもHUGの保証保険に入れますか?

入れる。ウォルセでも保証金部分(ウォルセ保証金)を対象にした返還保証があり、仕組みはチョンセ版とほぼ同じ。ただしウォルセは保証金自体が小さいことが多く、保険の必要性はチョンセより相対的に低いケースが多い。

大家が保険加入に反対したら入れませんか?

加入自体は借り手が単独で手続きできる商品が主流で、大家の同意が必須ではない場合が多い。ただし物件情報の確認に大家の協力が要ることもあるため、契約時にあらかじめ確認しておくと手続きがスムーズになる。

保証比率オーバーで加入を断られたらどうすればいいですか?

その物件のチョンセ契約自体を見直す材料にすべきだ。登記簿で先順位の抵当権を確認し、保証金の減額交渉やウォルセへの変更を検討する、あるいは物件を変える判断も選択肢に入る。「保険に入れない」という結果を、危険信号として受け止めることが実務上もっとも重要。

日本人がチョンセで部屋を借りる場合も対象になりますか?

外国人(外国人登録済みの在留者など)も一定条件で加入対象になる場合がある。ただし細かな要件は年々変わるため、契約前にHUGの公式窓口または不動産仲介士に最新条件を必ず確認してほしい。

一次資料・参考

  • HUG(住宅都市保証公社)公式サイト: チョンセ保証金返還保証 商品概要・利用手続き
  • 京郷新聞「HUG保証基準緩和がチョンセ詐欺を招いた―再び締めたら事故急減」
  • 租税金融新聞「HUG、今年のチョンセ保証金事故が前年比半減」
  • ファイナンシャルニュース「HUG、今年の債権回収額が代位弁済を上回る『ゴールデンクロス』」

※本記事は制度の構造解説であり、特定の保険加入・契約を勧めるものではありません。保証比率・保証料率・統計数値は執筆時点の公表情報にもとづく概算を含み、今後変更される可能性があります。実際の契約・加入にあたっては、HUG公式窓口や専門家への確認を必ず行ってください。ウォン円換算は概算です。

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