Amazonといえば「ネット通販」というイメージが根強い。だが2024年現在、Amazonの利益の大半はクラウドサービス(AWS)と広告から生まれている。EC(電子商取引)はむしろ薄利で、Amazonという巨人が稼ぐ仕組みは20年前とまったく異なる構造に変わった。なぜそうなったのか、数字と歴史から読み解く。
Amazonの収益構造 ― ECは「集客装置」、利益はAWSと広告
Amazonの2023年通期売上高は約5748億ドル(約85兆円)。セグメント別の営業利益を見ると、実態が浮かび上がる。
| セグメント | 売上高(2023年) | 営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 北米EC | 約3529億ドル | 約147億ドル | 約4% |
| 海外EC | 約1314億ドル | ▲25億ドル | 赤字 |
| AWS(クラウド) | 約905億ドル | 約248億ドル | 約27% |
| 広告サービス | 約469億ドル | 非開示(高利益) | 推定50%超 |
※出典:Amazon 2023 Annual Report
EC部門は世界最大の売上を誇りながら、利益率は薄い。AWSは売上の16%にすぎないが、営業利益の約6割を叩き出す。広告は急成長中で、GoogleやMetaに次ぐ世界第3位の広告プラットフォームとなっている。Amazonにとってネット通販は「人を集める場所」であり、クラウドと広告が「稼ぐ場所」という二層構造だ。
AWSの誕生 ― 「社内インフラ」が世界のクラウド標準になるまで
AWSの起源は2000年代初頭、Amazon社内のエンジニアリングチームが「サービスを再利用可能なモジュールとして構築しよう」と提案したことにある。2006年、このインフラを外部企業に貸し出すサービスとしてAWSが正式スタートした。当時は物好きなスタートアップだけが使うニッチなサービスと思われていたが、クラウドコンピューティングの波が世界を覆うにつれ、AWSはそのデファクトスタンダードとなった。
現在、AWSのクラウド市場シェアは約33%(Synergy Research, 2024年)。Microsoft Azure(約24%)、Google Cloud(約11%)を抑えてトップを維持する。生成AIブームでGPUクラウド需要が急増する中、AWSはNVIDIA製GPUクラスターの大口顧客であり、自社AIチップ「Trainium」「Inferentia」の開発も進める。
広告ビジネスの急成長 ― 「購買意図」データの圧倒的優位
Amazonの広告が強い理由は、データの質にある。GoogleやMetaの広告は「この人は何かを調べている」「友人の投稿を見ている」という文脈で届く。一方、Amazon広告は「この人は今まさに何かを買おうとしている」瞬間に届く。購買意図が明確なユーザーへのリーチは広告主にとって最高価値を持つ。
2023年の広告売上高は469億ドルで前年比+27%成長。Amazonでの検索結果上位表示、商品ページのスポンサー枠、Prime Videoへの広告挿入(2024年開始)など、マネタイズの場所を広げ続けている。
物流ネットワークの内製化 ― UPSとFedExを超えた配送網
かつてAmazonはUPSやFedExに配送を依存していた。しかし2010年代から物流の内製化を進め、現在では米国内配送の過半数をAmazon Logistics(AMZL)が担う。航空貨物機70機以上、配送ハブ数百拠点、デリバリーサービスパートナー(DSP)という独自フランチャイズ配送員網を構築した。
2023年、Amazonの配送コストは約1052億ドル。これは巨大なコストだが、配送網を自社保有することで「翌日配送」「当日配送」という競合が真似しにくいサービスを実現し、Prime会員の囲い込みにつなげている。さらにこの物流網を外部企業に開放する「マルチチャネルフルフィルメント(MCF)」でも収益化している。
生成AIとAmazon ― Bedrockとアレクサの再発明
生成AIの波においてもAmazonは手を打っている。AWSでは大規模言語モデル(LLM)をAPIで提供する「Amazon Bedrock」を展開し、Anthropic(Claude)、Stability AI、Metaのモデルを束ねるマルチモデルプラットフォームを構築した。AnthropicへはAmazonが最大40億ドルの投資を行い、戦略的パートナーとして連携を深めている。
音声AIアシスタント「Alexa」は初代モデルからの大幅刷新を進め、生成AIを組み込んだ「Alexa+」として会話能力を大幅強化した。スマートホームのハブとして再び存在感を高める戦略だ。
日本市場でのAmazon ― EC・配送・Prime会員の深化
日本はAmazonにとって北米・ドイツに次ぐ重要市場だ。日本のEC市場でAmazonは楽天・ヤフーショッピングと三つどもえの競争を繰り広げる。Prime会員数は非公表だが、数百万人規模とされ、Prime Videoのコンテンツ強化(日本オリジナル作品)や翌日配送の拡充で囲い込みを強化している。
投資家にとってAmazonは「ECの王者」ではなく、クラウド・広告・物流・AIを束ねる複合インフラ企業として評価される時代となった。AWSの成長鈍化と再加速、広告の伸び、生成AI投資の回収時期――これらが今後のAmazon株を動かすカギとなる。
※本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

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